体験談でわかる3つの取り組み
ここでは、中学1年生の時にミソフォニアを患った高校生Nさんの体験談に沿って、当協会の取り組みについて紹介していきます。
【高校生・Nさんの体験談】
「1.とにかく涙が出てきてしまう」
Nさんにミソフォニアの症状が現れ始めたのは中学1年生の時だった。当時、友達にからかわれたことが原因で様々な病気を引き起こしてしまい、同じ時期にミソフォニアの症状にも悩まされるようになった。
Nさんは、鼻すすりや咳払いの音を聞いてしまうと心拍数が上がり、殺意に等しい反応が生じてしまったり、とにかく涙が出てきてしまったりするといった症状に悩まされ始めた。ここでいう殺意とは文字通り殺したくなることを意味するが、この反応は本人の意図とは関係なく生じてしまう症状であるため、Mさんに悪気はなく、当然実際に行動に移すことはない。一度音が聞こえると、このような症状は1時間ほど続いた。

「2.理解されにくさが生きづらさにつながる」
ミソフォニアを患ってからは、学校や家庭で音に悩まされることが増えた。家族や学校の先生は一応Nさんの症状について知っていたが、真剣には向き合ってもらえず、Nさんの症状や辛さを理解してもらえた訳ではなかった。家庭では自室で過ごすことで苦手な音を避けられたが、学校ではクラスメイトが出す鼻すすりや咳払い、咳の音に対して症状が出てしまい、日々強いストレスに耐えながら学校生活を送っていた。
誰にも相談できずに生活するなかで、鼻すすりの音に耐えながら学校に通うことに限界を感じ、海外では鼻をすする習慣がないことを知ったNさんは、どうしても海外に行きたいと願う程にまで追い詰められていた。
取り組み紹介①「多くの人に伝わるように」
ミソフォニアの症状は理解されづらく、相談する機会や周りの配慮を得られにくいため、生きづらさを抱えている当事者は多くいます。

当協会はミソフォニアへの理解を広げるために、啓発活動に取り組んでいます。
「3. 治療を目指して病院へ」
高校一年生の頃、症状に耐えながら学校生活を送ることに限界を感じたNさんは、病院に行きたいことを親に伝えた。最初は小さな病院に通い始め、薬をもらいながら生活していた。高校2年生に進級した頃、これまでは家の中で音に悩まされることは少なかったが、徐々に親の呼吸音でもミソフォニアの症状が出るようになってしまった。学校でも家の中でもミソフォニアの症状で苦しむようになり、居場所がなくなったNさんは希死念慮を抱くようになった。ある日、Nさんの苦しみが限界に達してしまい、飛び降りることばかりを何度も考えてしまうようになり、医療保護入院することになった。
Nさんは「ミソフォニアがダメで」と医師に相談した。幸運な事に、入院先の医師はミソフォニアを知っており、治療法について考えてくれた。それ以降は、病院で自動思考記録表を書くといった治療を行ったことで、Nさんのミソフォニアの症状はかなり良くなっていった。やはり、医師がミソフォニアを知っていることが大事だとNさんは語る。
取り組み紹介②「治療に希望が持てるように」
ミソフォニアの治療法は確立されていません。そのため、もし治療を目指す場合は医師と相談の上で試行錯誤して最適な選択をする必要があります。
ミソフォニア症状で医療機関に診てもらう場合は心療内科や精神科に行くことが望ましいですが、医療の現場においてもミソフォニアの認知度は低いというのが現状です。

LINE相談では医療機関に関するご相談を多くいただいており、 ミソフォニア症状の改善に向けた可能性を少しでも増やせるように、当協会は医療機関の紹介活動や研究活動に取り組んでいます。
「4. 大学受験などの不安」
Nさんのミソフォニアの症状は良くなっていった。ただ、もし今まで通りの学校生活に戻ったら、ぶり返してしまうのではないかという不安があった。また、Nさんは大学受験を控えているため、試験中に音が聞こえてしまうのではないかという不安もある。そこでNさんは高校3年生に上がる時に通信制高校に転校することを決めた。大学受験の不安は受験上の配慮を申請することで対策したいと語る。
取り組み紹介③「より良く暮らせるように」
ミソフォニアの当事者は家庭や学校、職場等で音に日々耐えながら生活しているケースが多くあります。
当協会はミソフォニアに関するお悩み・ご相談をお受けしています。

「5. 伝えたいこと」
最後に、Nさんからミソフォニアの当事者やその周りにいる方へ伝えたいことを聞きました。
当事者の方へ
「本当に辛いことがたくさんあると思うんですけど、時には死にたくなっちゃったりとかする人もいるんじゃないかなと思うんですけど、今思うと、なんでそんなに死にたくなるまで追い詰められていたのかなと思うので、その時の感情に左右されすぎない方がいいと思います。とにかく、そんなに追い込まれなくても大丈夫、生きてるだけで偉いんだよと伝えたいです。」
当事者の周りにいる方へ
「たぶん、ミソフォニアの辛さは本人にしかわからないと思うんですけど、少しでもわかってあげてほしいと思います。殺したいと思われたら怖いと思うんですけど、意図せずにそう思ってしまうから、悪気はないということを伝えたいです。」